赤神に近づくな。 歯向かうな。 赤い髪がなびくのを見たのなら、すぐに立ち去れ。 灰色の街は彼の庭とも言えた。 街を我が物顔で取り締まる男の名はキレネンコ。 まるで神様の様に人々の上に立ち、そして神の様に気まぐれで。 彼の指先一つである家の住人が消え、広大な地が火の海になった。 「ねえ、ボス。」 お気に入りの雑誌を共に覗き込んでいた男がにやりと嗤ってキレネンコを見つめた。 目だけをそちらに向け、キレネンコも男を見る。 それはキレネンコに瓜二つの顔を持つ男だった。 同じ男と同じ女に授けられた、まるで悪魔の様な子供達。 お前達はまるで腹を食い破るようにして生まれてきたのだと罵られたこともある。 キレネンコと同じ顔を持つ男は、能面のようなキレネンコとは正反対に良く笑む。 男が何も言わない気であることを察したのかキレネンコはすぐにまた雑誌に視線を戻しその文面に集中する。 男はそんなキレネンコを楽しげに見つめて、その柔らかな紅の髪に白い繊細な指を絡めた。 「もう、先に寝るね」 静かにそう言って男はキレネンコのベッドから離れる。 「お休みキレネンコ」 その声を聞いた後、キレネンコもシーツに包まった。 暗い狭い部屋の中、そっと左に寝返りをうった。 その向こうの寝台に背を向け寝入るのは、見慣れた・・・いや、それともまた誰か違う者の背中。 キレネンコは目を細めた。 同じその背を見たのは、それはまるで遠い過去のようで。 遠い日の話 双子だった頃。 20080301 |