夜の暗い闇の底。 駆け抜ける陰は残像をも残さず空を切った。 所狭しと犇く木々の枝を葉を鳴らすこと無く渡り、躍り出たのは森の中にぽっかりと開いた草原だった。 広大な土地は青々と草花が育ち、夜風に優しく撫でられていた。 濃紺の空には大きな満月がぽっかり浮かび、辺りを青白く照らしていた。 生温い液体を振り落とし、微かな汚れを拭い去り。 貌を狐面に隠したまま空を見上げた。 全てを癒し、包み混む月光の下。 だらりと頭と両腕を垂らし、痩身の陰が長く伸びた。 美しい金の髪が、さらさらと風に揺れた。 木の葉の里に隠された最強の忍と名高い禦侮の姿だと、辺りに散らばった忍たちはその隠された瞳を微かに輝かせた。 禦侮はその身をいつも黒い衣で全身を覆っている。 死線を往くには動きづらい格好に見えるが、しかし彼はそれを感じさせない軽やかで繊細、敵でさえも目を奪われる洗練された動きで全てを長剣黒月でなぎ払っていく。 『ナルト、』 真の名を呼ぶ声に、禦侮は木々に隠れたその影を見つめた。 じんわり浮き出るように、白い人影が優しく笑み見つめていた。 面越しに目だけで何かと問う。 『火影が、呼んでる』 禦侮にしか聞こえない声は優しく言い、柔らかな動きで手招きする。 すぐに済ます。 そう言い、今度は従えた暗部の面々に目で「終わらせる」と合図する。 禦侮を前に、皆がすかさず後ろに退く。 その瞬間に禦侮は素早く印を結び火遁で作られた広大、凶悪な炎で全てを燃やし尽くす。 目を見張る暗部の面々を放って禦侮はさっさと姿を消す。 「ナルトお疲れ様。」 禦侮・・・ナルトは狐面をゆっくりと外し、いたわりの言葉をかける白い人物を見上げた。 「うん」 「火影が貴方を呼んでいます。行きましょう」 「疲れた。」 ナルトの言葉にこの人物はふっ・・・と言葉を飲む。一瞬の無表情。しかしすぐにその顔は蕩けるほどの笑みに変わり。 「では休みましょう。」 にっこり言ったその言葉に、ナルトは胸中で(お前はそれで良いのか!?)と叫んだ。 「行こうか?」 促すようにナルトが見上げて言うと、やはり彼は見ながら頷いた。 「はい。」 2007.9.16 |