月明かりを頼りに甲板に出る。 僕等の逢引は、いつだって真夜中。 そう。 テッドとウィルの逢引は、時々酷く幻想的だ。 思い出走馬灯。 「ねぇテッド。イルカになってみたいと思ったことはない?」 「なんだよいきなり」 「だってさ、思う存分海の中を漂って、時々人間に愛想振りまいて、可愛い、なんて言われてさ。なんか自由な気がする」 「ウィルは自由を望んでいるって事だろ?別にイルカにならなくても、この戦いが終わったら充分自由になれるさ」 ウィルはぷーと顔をふくらませて。 「テッドは夢がない」 ぷいっとそっぽを向く。 そんな子供っぽいそぶりもテッドの前だからするのであって、思わず温かな気持ちになるテッド。 「じゃぁ今自由になってみる?」 とテッドはふいに、にやりと笑い、船からダイブした。 ジャポンと大きな音を立てて、海に垂直に落ちる。 ウィルは慌てて甲板から下を見ると、テッドはぷかぷかと浮いて、とても気持ちの良さそうに泳いでいた。 それはまるでイルカがこっちにおいで。 とでも言ってるかのようだ。 ウィルは一瞬躊躇するも、思いきってテッドの後を追った。 海の中は冷たく、底冷えするけれども。 テッドと同じくぷかぷかと浮かび、背泳ぎしながら月を眺めるのは、とてもロマンチックで、幻想的な雰囲気を肌で感じた。 「ねぇテッド。確かにこの戦いが終わったら僕は自由になる。けど……けどね」 「なんだよ」 「傍にテッドがいなきゃ嫌なんだ」 「……っ」 自信なさげに、幼子が願いをこうようにか細い声でウィルはそう告げる。 テッドはそんなウィルを愛しく思うと同時に、いつまでも一緒にはいられない事をいつか言わなければならない。 それがもどかしく、胸を痛ませ、何も言えやしなかった。 * 結局、ウィルとテッドは戦争後、二人で旅をする事になるのだが。 今の二人にとってそれは未知数の未来の一つでしかない。 一緒にいられる『今』を大切に大切に心の宝箱にしまいましょう。 ウィルは思う。 きっとテッドも、二人で一緒にいられた時間を愛しく思うんだ。 僕を置いて、遠くへいって。 テッドが残した沢山の記憶の欠片だけを頼りに、『今』を生きる。 それはイルカのように自由気ままな旅ではないけれども。 愛しい気持ちがあるかぎり、思い出が輝けば輝くほど『今』を生きられる。 だから忘れないよ。 テッド。 君の事を誰よりも愛しく思う。 -------------------------------------------------------------------------------- あとがき。 ただ単にテッドと4主が海をぷかぷかしている所を書きたかった作品です。 こんなんですがお詫びと愛をこめて安里さんに捧げます。 2008,6,30 ゆんみん様から素敵な小説頂きました! てっつんかっこいい!てっつんかっこいい!!!!! 4様をリード?するてっつんがとっても新鮮です(安里の中でてっつんはどれだけヘタレなのか!? 本編終了後、手を取り合って二人が駆けて行く姿を思い浮かべ、胸がほんわかしました こんなにかっこいいてっつんをありがとうございました! 20080709 gift |